事前実験の成果をもとに1996年1月に関(山形大学付属小学校)は、自分のクラスで教育実践を行った。このクラスは3,4年複式学級であり、3年4年ともに男女それぞれ4名ずつ在籍している16名のクラスである。VTRでの交流のために、協同学習の開始までに宝箱作り、車作りの順で「ケント紙で作ろう」の 授業を終了した。3年生は山梨大学付属小学校と同じ方法で進められたが、4年生は分度器を利用して、正6角形以外の多角形を底面とする宝箱や、長さと角度を測って車の側面図を制作している。授業中は、子どもの制作活動や作品が協同学習の準備としてVTRに撮られた。山形大学付属小学校の子どもが山梨大学付属小学校の子供たちに教える場面や、山梨大学付属小学校の子どもがするであろう質問を想定して、それに答える場面などをVTRに記録し編集した。
山梨大学付属小学校でも同様に交信の準備が進められた。以下、日を追って活動内容を記していく 2月1日(木)1、2校時「宝箱の展開図をかく」 宝箱を作ることを知らせ、作り方を話し合う。底になる形を六角形と決め、展開図の書き方を 考えていく。注意事項としては側面と底面の交わりが直角になること、直角を三角定規ではかること、長さを正確に測ること、のりしろをかくことなどを与える。コンパスで円を かき、内接正六角形をかく。半径で円を六等分し、側面をかく。最後にのりしろをつけ、 切り取る。
底の展開図より大きくないと、ふたが閉まらないことから、どのくらい円の半径を大きくするか
考え2mmに決める。側面は1,2cm程度にする。あとは、底と同様の手順で展開図を作成し、切り取る。
回転模様のかき方をコンピュータで確認する。動きのある図柄や色使いの指導などを行って
から、作業に入る。
学習参観。帯模様のパターンのうち5種類の描き方をコンピュータ画像で学習する。そのうち 一種類を選び自分の図柄を作成する。
前日考えた図柄を使って、箱の側面に平行線を2本引き、その中に帯模様をかくことを確認 する。出来上がってから組み立てたときのことを考えて、図柄が反対にならないように導する。帯模様がかけたところで糊付けを行い、宝箱を完成させる。
今まで、制作してきた「宝箱」の作り方について、相手に伝える工夫を考える。
今日から横浜にいる関先生(山大附小)と交信することになった。子供たち一人一人が関先生 に自己紹介をした。名前、趣味、流行っている遊びなどを発表する。子供たちは、書画台
に趣味のものや流行っている遊びのもの(酒蓋)などを置き、説明していく。それに対して、 関先生がコメントを述べる。関先生も山形の雪の様子などについて、ビデオを流しながら説明する。
今回の交信の目的はこれから始まるテレビ会議の授業になれることである.子供だけでなく教師も 機器の取り扱いに慣れるために設定した。映像を通して、子供たちは関先生と親近感を持つことができた。
いよいよこれまで互いに算数の時間に学習してきた内容を知らせあい、子供自身の思考の質的 向上を目指す段階に入る。
テレビ会議を開始し、最初に自分たちの作成した「宝箱」を関先生に見せる。時間の都合上、3人が自分の箱について発表する。箱は、「書画台」で見せる。関先生が苦労した点などについて聞き返してくれる。次に山大附小の子供が作った車の発表をVTRで見る。子供の声が、聞き取りにくかった部分は関先生が補足する。今日からは山形が「宝箱」を作り、山梨が「車」を作ることにする。作り方については、発表しあっていない。放射状になる「宝箱の展開図」から「車の展開図」が作りにくいのでどのように「車の展開図」を書いたか、山大附小のVTRを流してもらう。また、制作したコンテンツを子供がパソコンに向かって操作し、位置関係を考えていく。 これにより展開図の書き方に2通りの方法があることを知る。「宝箱」でかいた展開図」を山梨方式、「車」の展開図を山形方式と名づけ、以後この呼び方で梨大附小の子供たちは「車の制作」をどちらの方式で行うかを考える。この交信では、当初放射状の展開図で「車の展開図」が書けると考え、展開図を書きながらいき詰まることで他者の考えを知ろうという欲求を引き出すことができた。協同学習としてねらっていた。「質の違いに触れ、新しいものを作り出す」=想像力の育成の一助を期す事ができたと考えている。
今度は、梨大附小の子供が次回交信までに「車作り」を行うことになった。
「山梨方式」で「車」の展開図がかけるとしていた子供たちだが、実際にケント紙にかき始める と「山形方式」に変えてしまう。理由を聞くと、「山形方式の方が一枚の絵でかくときに まとまってかきやすい。車の型紙を工夫したので山梨方式は面倒だ」という。2名を除いては 「山形方式」になる。車のバリエーションはVTRで見た山大附小の子供の作品より一段と増える。
車の搭乗者を正面側面背面にかく際に、向きを考えてかいた。また、色塗りにも工夫した。(
車のボディーは顔料ペイントで、細部はカラーボールペンを使用。)
車作りの工夫や苦労を発表する。山大附小の子どもが模様のかき方について質問したので、PCのお絵描きソフトを使って子どもが説明したり、研究会で作成したコンテンツを使って説明を行う。山大附小の子供たちと生出演のテレビ会議をしようと約束する。
山大附小から紹介された狐型の車に梨大附小の子供たちは大いに刺激された。二人の子どもの作文の一部を載せる。
「わたしは車を、つくるときにもっとくふうして、やまがたのふぞく小学校のみんなをおどろかせたいなぁと思いました。そして、やまがたのみんなも、はこをきれいにつくってくれると
いいと思います。」
「一番おもしろかった車は、きつねの形をした車です。でもじょうずでした。私は、何の形に しようかな?となやんでいます。人をかくのも、むずかしそうなので、れんしゅうをして
みようかな、と思っています。たからばこがとっても作るのにくろうしたので、車を作るのも、くろうしそうです。山形の人たちよりも、もっとじょうずに作ってあそびたいです。」
(山大附小では、VTRによる対応なので協同学習による想像力の工場を調査できない)